SLIP 考察 断片化への抵抗

いよわ考察

夢と余白

この世界は誰かの夢の中なのかもしれない…

“SLIP”は胡蝶の夢を実体化する架空の道具です。”SLIP”はどんなストーリーに対してもそれが誰かの夢なのではないかという疑念を生みます。また、この疑念がストーリーに余白をもたらします。”SLIP”によって簡単にストーリーの外部を作り出すことができます。つまり、どんなストーリーでもこじつけることができます。

SLIPのMVでは何度か上書きされる演出が見られます。このストーリーは誰かの夢であって上書きされた後に「現実」で目が覚めるのです。

では「現実」とは何か?

これが余白です。

「現実」はいくらでも想像しこじつけることが可能です。

上書きされる時点でストーリーを分割すればそれらのストーリーを入れ替えたり、その間に新たなストーリーを追加できます。こんなことをしてもストーリーの破綻はありません。つまり、ストーリーの切り貼りができるのです。こう考えると上書きとは何か?という問いに答えられます。

上書きはストーリーの「切り取り線」を示す行為です。また切り貼りによって新たなストーリーを作る行為が二次創作と考えられます。

断片化への対策

ほとんどの情報はショート動画として消費されます。となると音楽は断片化せざるを得ないでしょう。作者がそれを行わなくとも断片化は勝手に進みます。断片化すれば想定された意味とは異なった解釈がされてしまうのは必然でしょう。もはや意味をコントロールすることはできません。また、その断片化が作者を襲うこともあります。これは現代のどのクリエイターも不安にさせる要素なのではないでしょうか。

しかし、音楽を例にとれば、この問題は音楽が断片化に脆弱なメディアであると考えられないでしょうか。勝手な断片化の進行を防ぐのは不可能でしょう。

私はSLIPがその解決策だと考えています。

そもそも「切り取り線」が示されていたらそれに従うのでは?ということです。「切り取り線」に従わず切り取るのは…ね?

SLIPはまさに発明です。

SLIPは世界初の断片化に堅牢な作品ですから。

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